賃貸等不動産の時価評価
賃貸等不動産の時価注記とは
国際的な会計基準の共通化の流れを受けて、平成14年に「固定資産の減損に係る会計基準」がまず公表され、平成20年には「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」が公表されました。
わが国では、「固定資産」に区分されている不動産は原価で評価されていますが、国際財務報告基準(IFRS)では、「投資不動産」は時価評価と原価評価の選択適用とされており、原価で評価した場合には時価を注記することになっています。
新たな会計基準および指針により、平成22年3月末以降の事業年度においては、企業等が保有する賃貸等不動産については、時価等を注記することになりました。
「賃貸等不動産」とは、棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタルゲインの獲得を目的として保有されている不動産をいいます。将来の使用が見込まれていない遊休不動産も賃貸等不動産に該当します。連結会社間で賃貸されている不動産は、連結貸借対照表上、賃貸等不動産には該当しない等、その範囲については会計基準および指針で細かく規定されています。
時価の把握に鑑定評価等をご利用ください
賃貸等不動産を保有している場合、期末における時価およびその算定方法を注記する必要があります。ただし、賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は、注記を省略することができます。
時価とは、通常、観察可能な市場価格に基づく価額を、また、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額(「不動産鑑定評価基準」による方法又は類似の方法により算定された価額)をいいます。
弊社では、ご所有の賃貸等不動産の時価を把握するための価格調査または鑑定評価のご用命を承っております。広域にわたる多数の不動産の場合でも提携事務所のネットワークを活用して迅速に対応できますので、お気軽にご相談ください。
賃貸等不動産の範囲
賃貸等不動産会計基準、同指針においては、賃貸等不動産の範囲は次のように定められています。
- ・ 貸借対照表において、「投資不動産」として区分されている不動産
- ・ 将来の使用が見込まれていない遊休不動産
- ・ 賃貸されている不動産
賃貸等不動産の時価開示の流れ
「賃貸等不動産」に該当し、時価等を注記するかの判定は、以下の流れにより行ないます。
- 賃貸等不動産の時価開示までのフロー図
- 総額についての重要性の判断[原則的時価算定 みなし時価算定]→総額に重要性がある場合→個々の賃貸等不動産についての重要性の判断→個々の賃貸不動案に 重要性がある場合[原則的時価算定]→時価等の注記
- 総額についての重要性の判断[原則的時価算定 みなし時価算定]→総額に重要性が乏しい場合→開示不要
- 総額についての重要性の判断[原則的時価算定 みなし時価算定]→総額に重要性がある場合→個々の賃貸不動案に重要性が乏しい場合[原則的時価算定 みなし時価算定]→時価等の注記
注記事項および重要性の判断
1.注記事項
- 1. 賃貸等不動産の概要
- 2. 賃貸等不動産の貸借対照表計上額および期中における主な変動
- 3. 賃貸等不動産の当期末における時価及びその算定方法
- 4. 賃貸等不動産における損益
2.重要性の判断
賃貸等不動産の総額に重要性が乏しい場合は、注記を省略することができます。この判断は、賃貸等不動産の貸借対照表日における時価を基礎とした金額と、当該時価を基礎とした総資産の金額との比較をもって行ないます。なお、重要性についての判断は、不動産鑑定士は行えませんので、企業自身が行う必要があります。