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御影石の魅力 - 鑑定法人エイ・スクエア/畠山文三

都心部では、次から次へと高層ビルが建ち、歩道や広場もリニューアルされて上品で高級感のある空間が作り出されている。そうした空間構成で気づいたことがある。さまざまな色目や文様の石材が床や壁に使われ、鏡面仕上げのものは透明感があって美しい。毎日の行き帰り、御影石が張られた足元の床や目線の先の壁を眺めていると、この「固有名詞が普通名詞になった石」の魅力にはまってしまう。

 

御影石の魅力-イメージ

御影石は、地下のマグマが地殻内の深いところで冷えて固まったものだが、熱と石英や雲母、長石などの鉱物の粒が混ざり合い、それらの含有量によって風合いが異なる。素人目には、床や壁の御影石が、どこ産の何という御影石なのかまではわからない。建築用の御影石は、今やその殆んどが輸入され、種類も圧倒的に多いからだ。

 

かつて神戸市東灘区御影で産したことに由来する御影石は、「石材」としての名称であり、岩石分類上は花崗岩である。酸に弱くシミにもなり易い大理石(分類上は石灰岩)は基本的に内装材であるのに対し、御影石は硬く風化に強いため、内装用のほか、外装材としても広く使われている。国会議事堂は大正9年から17年の歳月をかけて昭和11年に完成したが、既に大正の終り頃には国産の御影石は資源の枯渇が進んでいたにもかかわらず、議事堂の石材には全て国産品を使用する方針が貫徹された。外装材には御影石(山口県産の徳山石、広島県産の尾立石など)が使われたが、時代が移り平成2年に竣工した東京都庁の外壁ではスウェーデン産とスペイン産の御影石が使われた。量的に日本の御影石を使う選択枝など無かったのである。

 

墓石についても、今や輸入石材で需要の8割から9割が賄われている。国内各地には採掘量は少ないものの、銘石と呼ばれる高級石材の採石場が点在し、国産の石材でお墓を建てたいというニーズに応えている。ただ、日本の石材屋さんは、中国やインドに出向いて技術指導をするなど、何らかのつながりのある委託加工先を持っている。そうした先から半加工品を輸入し、日本で文字を彫って墓石として仕上げ、墓地に据え付けるというのが仕事の実態のようで、思いのほか「国際化」が進んでいる。

 

白やグレー系の墓石が殆んどの西日本の墓地の景観に慣れていると、関東や東北地方の墓地では黒系の墓石が多く、西日本出身者としては「墓石に黒?」との違和感があった。近年は弔い方法も多様化して、樹木葬などの合葬埋蔵施設なども増えている。死後は国産の御影石の銘石で弔って欲しいと、彼岸の彼方で祈るしかない時代になった。

 

鑑定法人エイ・スクエア

不動産鑑定士 畠山 文三

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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