平成28年熊本地震-中西不動産鑑定事務所 /中西 信久
4月14日午後9時26分、熊本市街地の和食店の地下1階で講演会の打ち上げの乾杯が終わり、「さあ、食べよう」と刺身に醤油をかけているその時でした。「バシッバシッ」とすごい音がし、店舗が上下左右に大きく揺れました。このまま倒壊し、埋まって死ぬのではないかと思った程でした。私の古びた背広も醤油をいっぱいかぶってしまいました。地上では、消防車、救急車のサイレンが響き渡っていました。これが、当初、本震と言われた「前震」です。
4月16日午前1時25分、マンション7階で熟睡していた時、ベッドがドーンと突き上げられ、身体が宙に舞った途端に前後左右に大きく揺れ、全ての物が散乱し、ピアノも1m動きました。直ちに階下に駆け下り、道路の真ん中に避難しました。この時がマンションが倒壊するのではないかと思った「本震」です。
2度の強い地震で自宅、事務所とも2度メチャクチャになりました。まさか、あの前震よりも強い地震が来るとは…。その後、2週間程、水道、ガスのライフラインが寸断しました。コンビニに行っても弁当は売り切れ、水はポリタンクを持って近くの小学校の給水所へ行き、7階の我が家まで老体に鞭打ちながら運びました。家人が高所の揺れを恐がるので、小学校、病院の低層階に避難し、おにぎりの差し入れ等、人生初の経験もしました。あまりに余震が多いものですから、自宅、事務所で揺れる度に「今のは震度3でしょう」などと言って気を紛らわせている次第です。
現在、地震は少なくなっていますが、1日に3~4回は体に感じる突き上げるような余震があります。私個人は経済的損害は少なかったのですが、身内の被災、2週間のライフラインの寸断により、重い精神的ダメージを受けたような感じです。特に、震災後2~3日は頭がボーッとして、「これは現世なのか」と思ったりしたものです。うつの症状でしょうか。
自分のことばかり述べましたが、不幸にも亡くなられた方、自宅、事務所、店舗が全壊し、日常生活、お仕事に支障を来たしている方、本当にギリギリの生活をされている方が多く居られます。普通に生活できていることに感謝し、今後は熊本復興のために、微力ながら力を尽くしたいと思います。また、我々熊本の不動産鑑定士も、今後、不動産に関する被災地支援のための相談会を頻繁に行ない、被災者の方々のお役に立たねばと思っています。
最後に、この度の熊本地震に際して、全国の皆様より温かい励ましのお言葉を頂き、誠にありがとうございます。心より御礼申し上げます。(特別寄稿。筆者は公益社団法人 熊本県不動産鑑定士協会会長。)
中西不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 中西 信久
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 中西不動産鑑定事務所・中西信久・平成28年熊本地震・熊本地震 | 2016年7月20日