大学非常勤講師室の面々 - 森島不動産コンサルタンツ/森島義博
大学の客員教授として学生に「不動産」を教え始めて10年以上が経ちました。研究室は不要として通常は非常勤講師室に居ます。今回は非常勤講師室の友人達をご紹介したいと思います。
まずは、最初に仲良くなった西洋哲学のH先生。57才、独身。鼻の下に髭をたくわえたスマートな紳士です。気に入ったのは、健康診断の話題になったときの彼の答え。「健康診断をして病気が見つかると困るから、私はしていません。私は西洋哲学を勉強してきたから、西洋医学者の考え方を知っています。彼等の、なんとしても生き長らえさせる、と言う考えは間違っています。私は静かに死にたいのです。」その話に深く同感。仲良くなりました。
次に言語学のT先生。45才。顔が大きくアゴ髭を生やしています。彼はチベット語、サンスクリット語、パーリ語の読み書きが自在です。本当はチベット仏教の研究者ですが、需要がないから食べるために何でもやっているとのこと。すごい能力の持ち主なのにもったいないなぁ。彼の翻訳したダライ・ラマの本をもらいました。テレビを見ない理由として「自分と向き合う時間がなくなるから」と言います。「自分と向き合う時間」いい言葉だなぁ。
次は中国語のA先生。北京大学への留学経験のある32才、独身。ぽっちゃりとした大きな体。自分に興味のある話題になると、どこからともなく現れて話の中心に座ります。とにかく、いろんなことを良く知っている。天体望遠鏡の構造からメロンの産地のことまで。とうとうと話し続けます。
そして神学のI先生。36才ですがとても若く見える好男子です。他の先生方はセーターなどをお召しですが、彼は着ません。学生と間違えられるからだそうです。父上がキリスト教会の牧師さんで、その影響で神学の研究者になったけど、やっぱり需要がなくて年収は100万円。奥さんが看護師で、その年収280万円を足してなんとか食っているとのこと。なるほどなぁ。神のしもべに白衣の天使が寄り添ったんだなぁ。美しい・・・。
驚いたことに(驚いたら失礼ですが)皆さん大学院の博士課程を卒業されている。そして、大半が非常勤講師だけの収入で、いろいろな大学を掛け持ちしています。研究内容のせいか、そろって貧乏。無理もありません。1回90分の非常勤講師料は7千円足らずなんですから。非常勤講師室は、高度な哲学論議と、いかに食ってゆくかの議論が渦巻きます。「金に不自由しなければ何をしたいですか?」と問うと、「好きな勉強を思う存分にしたい。」ですって・・・。周囲に居ます?こんな人たち・・・。
森島不動産コンサルタンツ
不動産鑑定士 森島 義博
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 不動産鑑定士・森島不動産コンサルタンツ・森島義博・非常勤講師 | 2015年11月20日