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「銀座」百景 - 鑑定法人エイ・スクエア/畠山文三

 

3月18日に発表された本年1月1日時点の公示地価では、全国で最も高額な地点は銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で1平方㍍当り3,380万円。この1年間で14.2%上昇した。高額地点上位5位のうち4ヶ所が「銀座」で、その“実力”には改めて驚かされる。商業地の地価が高いということは、収益力が高いということにほかならない。三越伊勢丹ホールディングスが発表した2月の売上高速報によると、旗艦店といわれる新宿、日本橋、銀座の3店の中で、銀座店の売上げが前年同月比25%増と最も高かったようで、2月の春節時期に限らず、日本を訪れる中国人の“爆買い”が銀座の収益力=地価を押し上げる構図は当分続くかもしれない。

 

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およそ30年前のこと、北京の「銀座」を案内して貰ったことがある。王府井と呼ばれるその通りには書店や骨董品店、漢方薬店等が軒を連ね、トロリーバスが走っていた。一歩横丁に入れば「胡同」といわれる路地に清代からの「四合院」の建物が残り、人々の暮らしが垣間見えた。しかし、北京オリンピックを境にそうした光景は消え、拡がった王府井の通りには高層ビルや店舗が建ち並ぶありふれた繁華街に変わった。

 

日本には「銀座」がいくつ位あるのだろうか。全国を回っていると、「○○銀座」という商店街によく出くわす。しかし、地方都市の「銀座」はおしなべて元気がない。山口県周南市。新幹線の駅を出てすぐ右側に「銀南街」という通りが東へ延びている。地名は「銀座1丁目」である。夜の8時、アーケードの通りは真っ暗でとても入る気になれず、遅い夕食はロータリーを隔てた少し明るい「有楽町」で食べた。

 

その点、東京にはまだまだ元気な「銀座」が多い。品川区の「戸越銀座」や江東区の「砂町銀座」を歩くと、かつての「北京の銀座」に似た味わいがある。通りからちょっと路地に入ると、住宅が連なっている。商店街には揚げ物や惣菜を売る店が多く、今は余り見かけなくなったレトロな喫茶店もある。賑わっている小さなスーパーがあり、前では立ち話しに熱中するおばさんたち。そこに行けば知り合いに会えるので、いそいそと買い物に来たというような風情が漂う。

 

商業地「銀座」の歴史は明治期から始まる。地方都市においても自負と願望を込めて一番の繁華街であり続けようとしたのだろうが、その大部分は過去の話しになった。車社会と郊外型店舗の隆盛が駅前の一等地であれ「銀座」の衰退を招いた。人口減少と高齢化が進む地方都市で「銀座」の復活を図るために、いろいろな試みがされていよう。生活利便性と人口密度を高めるコンパクトシティ化により、常連の買物客が立ち話しに興じる風景を復活して欲しい。

 

鑑定法人エイ・スクエア

不動産鑑定士 畠山 文三

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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